相続時精算課税制度とは、贈与の受贈者(もらう人)が贈与時に贈与税を支払い、その後の相続時にその贈与財産と相続財産を合計した価格をもとにして相続税を計算し、相続税からすでに支払った贈与税を控除するという制度です。

サラリーマンで言えば毎月源泉税を給与から天引きされていて、年末調整をする、というイメージです。ですから、二重に税金を払うことではありません。
「何だ、結局税金を取られることになるのか?得な制度ではないじゃないか!」
と思われた方もいると思います。

ですが、ケースによってはかなり得になる場合もあるのです。
それは、贈与から相続が発生するまでの間に価値が上がる可能性が高い、あるいは間違いなく上がりそうな場合は、財産の評価額を贈与時の低いままで固定させることができるという点です。
これがバブル期のようにはっきりとした値上がりが見通せていたなら有効ですが、やはりなかなか利用するのは難しいかもしれません。
ですが、次のような財産であればこの相続時精算課税を大いに利用する価値があります。

①収益物件
収益性の高いマンションを子に贈与しようとしても、一括で行うとどうしても高額な贈与税が発生するため、実際には諦める人が大勢いました。
これが、この制度を使えば緩和することができるわけです。
しかも、所有権が子に移転しますので、収益物件から入る収入を使って、例えば住宅ローンの返済を前倒しで行うとかすれば、子にとっては金利負担の軽減などを含め、大いに利用価値があるわけで
す。

②自社株式
自社株式の評価が、これまでは類似業種比準価額であったが、今後はリストラを行うのが確実であり、これを行うことによって、従業員が100名を切るなど、評価方法が純資産価額などへ移行する場合に、株価が上がることが予想できる場合には、財産を低額で固定するという意味で利用価値があります。
(多くは会社規模の縮小で株価が上がることが多いため)
もっとわかりやすい例としては、株式公開を目前に控えている自社株式なんかもあります。
(最近は株式公開と同時にキャピタルロスになることも多いので必ずメリットがあるとは言えませんが)

③生前の財産分与
これは、生前にある程度の財産の分与を決定したい場合です。
例えば、事業承継させたい子供に、相続時精算課税を利用して自社株式を贈与します。
その代わりに遺留分の放棄を交換条件とします。
さらに、他の子供たちには不公平にならないように残りの財産を遺言で相続させる、なんていうことを組み合わせると、生前にかなり思った通りの財産分与を節税をしながら実現できるというわけです。
(遺言をしても、その通りにいくとは限りません)
この制度には適用限度額があります。それは2,500万円までの贈与であれば相続時精算課税制度では、贈与税は課税されないということです。
この非課税枠を超える贈与金額は一律20%の贈与税が課せられます。
(平成23年度末までは、これに<住宅取得等資金の非課税制度>という別枠の1,000万円が上乗せされていましたが、現在はなくなりましたので注意してください)
また適用の対象になる者は、贈与者は65歳以上の親に限られ、受贈者は20歳以上の子供になります。
(これには、代襲相続人すなわち子供が亡くなって孫が相続するという場合も含む)

ところで、贈与税の課税制度には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、上記のような一定の要件に該当する場合には、相続時精算課税を選択することができるわけです。
この選択を行おうとする受贈者は、その選択にかかわる最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、所轄の税務署長にその旨の届け出をすることになります。
届け出は、贈与税の申告書に添付します。
そして、一度届け出をすると、相続時までは固定的に継続して適用されますので、後から「やっぱりやーめた」というわけにはいきませんから、気をつけてください。

またこんな疑問も浮かぶと思います。
「暦年贈与と相続時精算課税の選択が出来るということですが、兄弟がバラバラに選択できるのでしょうか?」

この選択権はあくまで受贈者側にあり、例えば長男は暦年贈与を選択し、次男は相続時精算課税択を選択することができるのです。
さらに言えば、贈与者は父、母ごとに選択することができます。
例えば、長男が父からの贈与に関しては暦年贈与を選択し、母からの贈与に関しては続時精算課税を選択することが出来るのです。このように、それぞれもらう人が決めればいいということになっています。
ちなみに、贈与財産の種類、金額、贈与回数には、制限を設けていないので、土地建物をもらってもいいですし、オーナー会社の自社株でも良いし、金額はいくらでもかまいません。
一度に贈与してもいいですし、何年にも分けてもいいので、回数に制限もありません。

このようにメリットとデメリットがかなり微妙な制度ではありますが、使い方によっては、かなり有効にもなりますので、専門家を交えて一度検討してみる価値はあると思います。